フォンテーヌブローの森

ParisPhoto開催中に展示のため初めての渡仏。
3泊と短い期間でしたが市内の美術館を巡ったり、いままで夢想するばかりだったヨーロッパの森に行ったり、幸福な時間を過ごしました。
フォーンテーヌブローの森はパリ市内からは少し遠いけれど、広大で、西洋絵画史や中世の森の文化史にその名を刻まれた特別な森です。
森の入り口に建つフォンテーヌブロー城からバルビゾンまで森を抜けていく長い長いコースの中には草が踏み固められただけの頼りない道もあり、
そうした森の中を恐る恐る、おとぎ話の主人公になった気持ちでずうっと歩くという経験ができたことは本当にうれしかった。
日本の狭い国土の中ではなかなかできることではない。特に平坦な森が長く続く場所というのはなかなか見つかりませんから。

日本とは植生の異なる見渡す限りの森の中に、かつて中世の貴族が狩り場のために切り開いた森の痕跡や、
ミレーやコローなどバルビゾン派と呼ばれる画家たちが歩き、観察し、描いた風景をたどる。
そういう経験をあとで思い起こす資料になるような写真を撮るのも良いと思いつつ、今回の短い滞在時間の中では難しいと思って諦めました。
その代わりに日本で森の木々を撮るような気持ちで写真を撮ってみようと"フツーに"撮影して帰国してから見てみると、
本の森で撮る写真と大差がなかった。
写っている植物をみれば日本でないことは(植物に詳しい人には)なんとなく分かるのですが、
樫が多く日本に少し似た植生の森を写しても自分の記憶にあるだけでそれが異国の森だと伝わってこないわけです。
ただ現地の人が一緒に写っていたらずいぶん違う印象になったのだと思う。説得力があるというか。
青木ヶ原とか奥多摩の森で西洋のモデルを立たせて撮られた広告が私にはとても不自然にみえるのと同じ話で、
ある人物の肌や髪、瞳の色、質感は彼らの故郷の光と植生、建築に良くなじむ。
また森の比較はできなくても人が比較対象であればそれがどういう質のものか容易に感じ取ることができる。