古墳近くに生える木

栃木県のなじみ深い木の一つがこのコブシの巨木。
中学時代に偶然見つけて以来、記憶に印象強く残っている。
初めて見たときは春先で満開のコブシの白い花をつけて枝を広げていた。
その枝の伸びっぷりが見事で、枝先は360度地面に付きそうなほどだった。
霊樹である。
民家と雑木林に囲まれていたために当時は知る人ぞ知る巨木としてあったが、
先日散歩で訪れると木の周りが舗装された公園になっており、多少は目立つようになっていた。
驚いたのは雑木林であった場所が実は古墳だったらしく、
土がこんもりした古墳らしきものがコブシの公園の舗装路の真ん中に鎮座しているということだった。
異常な場所である。
古墳があるくらいだからコブシの巨樹は樹齢が半端ないのではないかと想像したが、
(巨樹好きとしてはかなり残念な感じなのだが)たかが100年〜150年くらいらしい。
まぁそれだけに人間の寿命と成長度合いと比べると驚くべきことなのであるけれど、
100年前なんて古墳の歴史に比べたらつい最近の事である。
古墳という遺跡がある場所に立派な巨樹が生えているという事は歴史的にあまり関連性がなさそうだった。
古墳がある事とは関係なく何となく植えられて何となくでかくなってしまったのだろう。
古墳があるから木が切られずに守られたという想像もできるが、
その場所に行ってみると、なんとなくそういう感じがするのである。

公園が整備された事で、残念ながらコブシのあの立派な枝先は伐られてしまっていた。
だいたいどこの巨樹もそうであるが、広く知られるようになると安全のために枝が切られてしまう。
しかし公園が整備された事でこれからも木は守られていく。
その公園ではコブシの木と古墳が同等の価値を有しているように思えた。
というか古墳の方は雑草が生え放題で結構雑な扱いだった。
歴史的価値のある古墳よりも巨樹を愛でる気持ちが前に出てしまっている。
いつかコブシの巨樹の近くにあるおかげで古墳が守られるという日が来るのかもしれない。